風の抜け方まで知っている手で

– 都会の木に必要なのは、“地元の医者”です –

目黒や白金、等々力や深沢など——
このあたりの街路樹や庭木は、特別な「空気」の中で生きています。
風の抜け方、日当たり、降る雨の質さえも、少し郊外とは違います。
都市特有の乾燥、ヒートアイランド、コンクリートの照り返し。
木々は、その土地ごとの“緊張感”の中で、静かに適応しています。

だからこそ、
その土地で四季を見つめ、雨や風のクセを肌で知っている者にしか、
本当の意味で“剪定”はできないのだと思います。

私は「樹木医」として、
木の健康状態だけでなく、
“この街に暮らす木”の呼吸を読むことを大切にしています。

たとえば——
ある年、シダレザクラの花が少なかったことがありました。
振り返ると、その前の8月は雨がほとんど降らず、
ちょうど花芽分化の時期に、樹が水分不足のストレスを受けていたのです。
そんなささいな“地域の気候の変化”が、翌年の春の景色を左右します。

外からやってきた職人が剪定しても、木は何も言いません。
けれど、木は静かにストレスを感じています。
そしてそれは、翌年の枝ぶりや花芽のつき方に、確実に現れます。

都会に生きる木には、
その土地の風とともに歩んできた手が、一番優しいのです。

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